とぐりの学芸員講座を開催いたしました。(2017/11/20)


2017年11月20日(月)、「とぐりの学芸員講座」を実施いたしました。

○講演「染付のはじまり-中国元時代の青花磁器について-」(14:00~15:30)
当館アドバイザー・学芸員の木野香代子が、中国元時代の青花磁器について、そのはじまりとルーツの謎をお話しいたしました。青花磁器とは日本で言う染付磁器のこと。釉薬の下に呉須(ごす)顔料で絵付けをし、青い文様をあらわします。
本講演では、当館所蔵品である「青花 牡丹唐草文 瓶」(元時代 景徳鎮窯)を展示し、皆様にご覧いただきました。その上で青花磁器とは何か、各国ではどのように呼ばれているのか、などといった基本的な部分からお話しいたしました。
続いて、青花のはじまりである中国・元時代に作られた青花磁器(以降元青花と表記します)の発見の経緯を、研究史を交えてお話しいたしました。なかなか目にすることのできない書籍のご紹介もあり、皆様興味深く聞いておられました。
現在までの研究で、青花が元末に景徳鎮窯において誕生したこと、成立当初から技術的にも様式的にも成熟していたことなどがわかっています。一方で、これを誰がどのような経緯で生み出したのか、その技術とデザインはどこからきたのかなど判然としないことも多くあります。
休憩を挟んで後半からは、中国陶磁研究者でもある木野の研究の一端を皆様にご覧いただきました。まずは元青花の誕生について。陶磁器の焼成を司る役所の設置や、近年、景徳鎮窯から元代皇帝専用の文様をもつ製品が出土したことなどにふれ、政治的な要因から元青花誕生の背景を探りました。また、文献資料からも、輸出不振によって宮廷主導で製品開発が行われていたことを指摘しました。
次にデザインについて。元青花は大型の盤や瓶、壺などが多く、それらを区画割りして、緻密な文様を描き埋める構成が特徴です。本講演では、元と交流のあったイスラーム陶器や中国国内産陶器からの影響、文様主題が共通する絵画や挿絵本との関連性など元青花のデザインの元とみられる様々な可能性を多角的にご紹介いたしました。
呉須で絵付けされたうつわは今を生きる私達にとって、身近な存在です。現代まで通じるやきものの技術、デザインのルーツを感じていただけたことと思います。

質疑応答では、元青花に描かれている文様の意味、使われている呉須の成分や運搬方法についてなど活発に質問が飛び交いました。また、お客様からは、「歴史をふまえて文化の流れがわかりました」、「日本のやきものに興味がありましたが、中国のやきものを知ることができ、とても勉強になりました」、「元青花の世界に夢中になりました」などの声をお寄せいただきました。専門用語が多くて難しい中国陶磁にぐっと親しんでいただけた回となりました。



○自由観覧 (15:40~17:00)
貸し切りの館内で現在開催中の『18世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅱ―展』を自由にご覧いただきました。

次回のとぐりの学芸員講座は12月11日(月)、学芸員の小西麻美が「古伊万里の文様―中国版画との関係―」と題してお話しさせていただきます。まだ若干名の余裕がございます。
皆様のご応募をお待ち申し上げております。

とぐりの学芸員講座を開催いたしました。(2017/10/30)


2017年10月30日(月)、「とぐりの学芸員講座」を実施いたしました。

○講演「鍋島焼と江戸の遺跡」(14:00~15:30)
当館ジェネラルマネージャー・学芸員の黒沢愛が、江戸の遺跡から出土した鍋島焼をご紹介しながら、鍋島焼の献上・贈答についてお話しさせていただきました。

まずは鍋島焼そのものについて。現在第3展示室に出展中の「色絵 紅葉流水文 皿」を取り上げ、盛期鍋島の特徴である木盃形や、高台の櫛目文と三方にあらわされた裏文様、大きさの規格性、4色の色遣いを確認しました。また江戸時代後期の文献史料から見える鍋島焼の献上あるいは贈答は、徳川将軍家や幕閣、大名家など、身分の高い人々に向けて行われたことをご紹介いたしました。
その後、話題は江戸の遺跡へ。まずは発掘事例が少ないものの、文献史料と関連のある後期鍋島の事例と、国産磁器の献上のはじまりの様子が垣間見える、江戸城跡。そして上級旗本で、日光奉行や大坂町奉行など重要な役職を務め、佐賀鍋島藩からの直接の贈答が推測される彦坂家。有力な大名である龍野藩脇坂家や、佐賀鍋島藩との姻戚関係の深い宇和島藩伊達家の出土品からは、江戸時代の間に鍋島焼が“伝世”した様子をうかがえました。また、文献史料の研究によれば直接的な献上・贈答が考えにくい町人地から、後期鍋島が出土したことも取り上げ、文献史料や伝世品からだけでは中々知ることの難しい鍋島焼の献上・贈答の一面に触れていただきました。
出土品や文献資料を読み解いていく機会はそう多くないため、内容が難しい点もあったかと思いますが、皆様、大変興味深く聞き入っておられました。講演終了後は展示室で作品「色絵 紅葉流水文 皿」をご覧になられている方が多かったです。現代のみならず、江戸時代よりより珍重されてきた鍋島焼の姿とそのルーツを辿ることのできた90分だったと思います。



○自由観覧 (15:40~17:00)
貸し切りの館内で現在開催中の『18世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅱ―展』を自由にご覧いただきました。

次回のとぐりの学芸員講座は11月20日(月)、アドバイザー・学芸員の木野香代子が「染付のはじまり―中国元時代の青花磁器について―」と題してお話しをさせていただきます。詳細は今展チラシおよび当館HPをご覧くださいませ。まだ若干名の余裕がございます。皆様のご応募をお待ち申し上げております。

とぐりの学芸員講座を開催いたしました。(2017/7/3)


2017年7月3日(月)、「とぐりの学芸員講座」を実施いたしました。

○講演「館蔵品にみる朝鮮陶磁入門」(14:00~15:30)
当館学芸員の小西麻美が、戸栗美術館館蔵品の朝鮮陶磁を通して、朝鮮陶芸史の概説をお話しさせていただきました。当館では開館当初より朝鮮陶磁を所蔵しておりますが、近年は機に恵まれず、今回単体ケースでの出展にて数年ぶりのお披露目となりました。

朝鮮陶磁入門ということでしたが、館蔵品の性格に従って高麗時代からの解説となりました。まずは朝鮮半島が高麗王朝によって初めて統一されたことや、その後に朝鮮時代が続くことなど基本的な朝鮮半島の時代区分をレクチャーし、作品解説に移りました。
高麗時代は、特に青磁が発達した時代。緑の美しいものや黄色味あるもの、象嵌のものや鉄絵のものなど様々な製品が伝世しています。仏教文化を背景に多様に発達した青磁の魅力を、歴史的背景を交えながら解説いたしました。続く朝鮮時代には、白磁、青花、粉青沙器が発達します。特に高麗青磁から粉青沙器への移行、その後の白磁の広がりという流れは、日本磁器の発展の流れと比較すると独特なもので、皆様興味深く聞き入っている様子でした。
講演全体を通して国教の思想など、国としてあり方が文様や造形に反映されている様子を、作品画像を通じてご覧いただきました。また、朝鮮初期に作られた白磁と伊万里焼との関連性にも触れ、日本の磁器が朝鮮陶工たちによって発生するに至った歴史を改めてご確認いただけたことと思います。

質疑応答では胴継ぎをしているか否かなど朝鮮での製作技術に関するご質問がございました。やはり、朝鮮人陶工たちの技術によって始められた伊万里焼との関係を考えると興味深い点と思います。
また最後には単体ケースで作品をご鑑賞いただきました。出展の「青花 秋草文 瓶」は創設者 戸栗亨が特にお気に入りだった作品のひとつ。作品を前にすると新たなご質問を頂き、解説を交えながら、皆様楽しくご鑑賞されていらっしゃいました。朝鮮陶磁の深さに触れて頂けた90分と思います。



参加者の皆様からは「ただ見るだけでなく、一言でも解説を聞くと、ぐっと興味がわきました」「朝鮮のやきものについての解説を詳しく分かりやすく聞くことが出来て良かったです」というご意見をいただきました。普段の肥前磁器を中心とした展覧会では朝鮮陶磁の出展の機会を作ることが難しいため、美術館にとっても新鮮な会となりました。

○自由観覧 (15:40~17:00)
貸し切りの館内で現在開催中の『17世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅰ―展』を自由にご覧いただきました。

次回のとぐりの学芸員講座は、次回展覧会「18世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅱ―展」期間中に開催いたします。詳細は次回展チラシおよび当館HPにてご案内申し上げます。皆様のご応募をお待ち申し上げております。

とぐりの学芸員講座を開催いたしました。(2017/6/19)


2017年6月19日(月)、「とぐりの学芸員講座」を実施いたしました。

○講演「陶器と磁器 初期の水指が語ること」(14:00~15:30)
開館4年目から5年間常勤学芸員を勤め、現在は当館学芸顧問である森由美が、陶器と磁器の定義付けの難しさについてお話しさせていただきました。

まずは土器、炻器、陶器、磁器という日本のやきものの流れを、写真も交えながら簡単にご紹介いたしました。その流れの中で最後に登場する磁器は、佐賀・有田で誕生。伊万里焼と呼ばれたこれらの磁器は、当初は陶器である唐津焼と同じ窯で焼かれていたことがわかっています。唐津と伊万里、ふたつのやきものの違いを、原料や絵付けの色(唐津は茶色の鉄絵、伊万里は青い染付)などからご説明いたしました。

その上で、「染付 山水文 水指」(『17世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅰ―展』出展作品)が陶器であるのか磁器であるのか、に話題が移ります。本作は開館当初からのコレクションであり、森にとっても思い入れのある作品の一つ。胎土は陶器質の粘土で、その上に白化粧、染付によって丁寧に絵付けを施し、釉薬を掛け焼成しています。つまり胎土による分類では陶器ですが、見た目や作った人の意図としては磁器と言え、当館では「伊万里焼」として分類していることを解説いたしました。またこのような作例が生まれた背景として、各窯における原料確保の問題、陶器質の胎土であるからこそ生まれる独特の風合いについて触れました。

質疑応答では、磁器の原料が採れる泉山や、有田と美濃の磁器生産体制の違い、古染付についてなど、様々な質問が飛び交いました。また最後には参加者の皆様同士で感想をお話しいただく時間もございました。 講演終了後も単体ケースに入った作品を取り囲みながら、お互いに感想をお話ししあったり、新たな疑問を投げかけあったりと、皆様いきいきとしたご様子でご鑑賞されていらっしゃいました。

参加者の皆様からは「磁器と陶器の違いなどわかりやすく、大変勉強になりました」「お隣の人と話し合うことをすすめて頂いたのが非常によかった」というご意見をいただきました。 今回の講演で作品はもちろん、やきものへの関心が少しでも深まりましたら、嬉しく思います。



○自由観覧 (15:40~17:00)
貸し切りの館内で現在開催中の『17世紀の古伊万里―逸品再発見Ⅰ―展』を自由にご覧いただきました。

次回のとぐりの学芸員講座は、7月3日に開催いたします。まだお席に若干の余裕がございますので、ご希望の方はお早目にお申込みください。皆様のご応募をお待ち申し上げております。