ゴールデンウィークです!自然の風が心地よく、ウキウキと外に出かけたくなる季節がやってまいりました。いかがお過ごしですか?
4月5日(土)より6月29日(日)まで、館蔵「匠の技−やきもの、工芸美の結晶」を開催中です。館蔵の肥前磁器の中から、<江戸時代の陶工たちの冴えわたる技と美の結晶>に焦点をあて、"うつわ"としての用途を越えた工芸品的作品を中心に展示しています。彫り文様や貼付細工などの細かな装飾はもちろん、作品自体のフォルムを通して、二次元から三次元への空間美をご堪能ください。
今展示の企画で、<絵付の技術><成形の技><細工の精巧さ>などダイレクトに「匠の技だね〜!」と感じる作品の他、<青磁染付>など見た目では判別しにくい、作業工程を踏んだ職人技の作品をピックアップしています。
その中で、どうしても外せない作品が、展示№54「瑠璃銹釉 瓶(伊万里 17世紀中葉)」です。「どういう技がすごいんだ?」と聞かれても、釉薬の発色や瑠璃釉と銹釉の掛け分けるバランスなどもさることながら、一言であらわすならば「茶筅形の絶妙なフォルム!」としか言いようがありません…。この作品は何度か出品していますが、何故か見る度に惹きつけられる逸品なのです。この不思議な力は、まさか黄金分割?
黄金分割とは、【ひとつの線分を外中比に分割すること。ほぼ1:1.618。長方形の縦と横との関係など安定した美感を与える比とされる。(広辞苑)】という視覚的効果を産み、2辺の比が黄金比をなす長方形は、ギリシア時代から最も調和のとれた長方形といわれています。自然界では、ヒマワリやマツの実の種子の配列などに黄金分割が見られるそうです。まさしくDNAに組み込まれている、神秘の技。
日本には、16世紀にキリスト教の布教と共に西欧の先端知識がもたらされています。バロック・ルネサンス時代に大流行した黄金分割や遠近法などで、視覚的効果を計算して造られた、建築物や庭園の整形式造形法もそのひとつです。宣教師の報告には【後陽成天皇が宣教師に宮廷関係の庭園、建築の担当者に西欧の技術を教えるよう命じた】とされる記録があります。そのため、宮廷や幕府の作事奉行であり、将軍の茶道指南であった小堀遠州(1579〜1647)がプロデュースした茶室や庭園には、黄金分割や遠近法など西欧手法が巧みに用いられています(南禅寺方丈庭園、大徳寺方丈庭園、狐篷庵など)。
ためしに、この瓶を採寸してみたところ、横幅を1とし、底から1.618倍の高さの部分が、瓶の中で一番細くなっています。細長い瓶ながら、見る者に安定感を与える下膨れのフォルム。くびれの位置がみごとな造形美。陶工の感なのか、計算された技なのか?神秘の技、黄金分割、まさにゴールデン!
皆様のご来館をお待ちしております。