明けましておめでとうございます。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
戸栗美術館では、2004年1月6日(火)〜3月28日(日)
まで館蔵「古伊万里 侘と華 —初期伊万里と金襴手」展を 開催いたします。
素朴で味わい深い「初期伊万里」と、器面いっぱいにきらびやかな金彩を施した絢爛豪華な「古伊万里 金襴手」。 今展示では両者それぞれの様式が奏でる美の世界
を、存分にお楽しみください。
さて、新春第1号の[学芸の小部屋]。 今号のおすすめ作品は、第1展示室入口正面の単体ケースに飾られている展示 No.1《染付 樹下人物文 鉢》(口径 32.0cm 高 20.9cm/17世紀前期)。 今展示ポスターに登場している作品であり、当館所蔵の「初期伊万里」作品群の中でも5本の指に数えられるであろう名品です!
鎬を施した凹凸の側面に、松梅文と樹下に3人の人物を染付で描いた大深鉢。この作品と類似する陶片が、草創期窯のひとつである小溝窯より出土していることから、「初期伊万里」の最も古作の部類に入る作品と考えられています。
素地が厚く、大きく歪んだ鉢に、これまた他の2倍はあろうかという程ひときわ大きく誇張されて描かれた人物。服装などからポルトガル人の宣教師とも推察されます。 江戸時代当時の成人男性の平均身長を約 160.0cmと仮定すると、単純計算でもこの人物の身長は約 3.0mにもなります!見上げる程大柄な異国の人に、初めて出逢った時の衝撃と驚嘆の気持ちを表現しようとしたのでしょうか?!
豪放かつ丁寧な筆致で文様を描いたこの作品は、同展示室内に陳列されている「初期伊万里」の中でも、圧倒的な存在感を放っています。
ところでキリスト教を広めるため、ポルトガルから多くの宣教師たちが日本に来日したのは室町時代のこと。ポルトガル人よりもたらされたものは宗教だけでなく、「カボチャ」、「パン」などの食べ物、「鉄砲」などの道具類、そしてたくさんの〝外来語〟が日本語として取り入れられるようになりました。
例えば、日本食の代名詞的存在「テンプラ(天麩羅)」。 お正月の遊び道具でお馴染みの「カルタ(歌留多)」。 表面に凹凸があり、昔は献上品として角が24個あるのが正式とされていたいう、小さく愛くるしい形の「コンペイトー(金平糖)」。 屋台ラーメンやお豆腐売りにとって、必要不可欠な商売道具のひとつ「チャルメラ」など、どれも日常生活の中で日本語として普通に使われているものばかりです。
その他「タバコ(煙草)」、「ミイラ(木乃伊)」、「ボタン(釦)」など、興味深いところでは「ピンからキリまで」の「ピン(=〝点〟という意味)」という言葉もまた〝外来語〟なのだそうです(「テンプラ(天麩羅)」、「カルタ(歌留多)」に「コンペイトー(金平糖)」……いかにも日本的なもの示すと思っていた日本語が、実は〝外来語〟だった……何か複雑な思いにかられるのは筆者だけでしょうか?)。
さて、ここで素朴な疑問をひとつ。《染付 樹下人物文 鉢》(17世紀前期)に登場する3人の人物。一体何を、何語で語り合っているのでしょう? 皆様はどう思われますか?
皆様のご来館をお待ちしております。