夏ですね!暑いです!!皆様いかがお過ごしですか?今年の異常な記録的猛暑の影響で、夏バテし食欲が減退している方もいらっしゃるのではないでしょうか? 汗をかいたら適度な休憩と水分補給が大切とのこと……松濤地区をお散歩される際には〝適度な眼の保養〟も兼ねて、是非当館にお立ち寄りください。
現在当館では、9月26日(日)まで館蔵『古伊万里にみる江戸のくらし—装飾と実用の姿—』展を開催中です。 江戸時代、人々の生活の細部まで浸透し、くらしに潤いと彩りを添えた「伊万里焼」の数々をこの機会にお楽しみください。
今展では夏休みの宿題の為か、親子連れでご来館されるお客様をよくお見かけします。 展示室内でお子様と一緒になり、熱心にメモを取っていらっしゃる親御様の姿…とても印象的です。
8月に入り、そろそろ宿題や課題に追われている学生の方も多いのではないでしょうか?夏休み最後の日をのんびり過ごす為にも、親子一丸となって課題達成に向け、頑張ってください!
また今展示作品の中で、何かお客様のお気に入りの作品がありましたら、是非アンケートにご記入くださいね。ご感想お待ちしております!
さて今回は、第2展示室より《色絵 吉祥文 段重 伊万里》〔江戸時代(19世紀) 通高21.0cm 口径13.2cm 高台径10.6cm〕のご紹介。
同形の器を3段に重ね、その上に共蓋の付いた段重です。 濃い赤地に亀甲を7箇繋げて白抜きし、その両脇に飛鶴と瑞雲を散らし、黒・緑・青・紫の上絵と、金彩を施した華やかな意匠が特徴的です。
日本や中国で特別な存在として扱われてきた鶴は、亀とともに長寿を象徴する吉祥の鳥として、古くから工芸品の意匠として用いられてきました。
初期伊万里では鷺に比べ、鶴を意匠として描かれた作例は少ないものの、17世紀後半以降の柿右衛門様式になると、色絵で松竹梅や亀とともに吉祥文様として描かれるようになりました。
段重とは料理を入れて何段かに重ねる箱形、もしくは円形の容器のことで〝重箱(こちらの言葉の方が、ピンとくる方も多いかも知れません)〟ともいいます。
段重には2段から5段くらいまであり、一般的に漆器が多用されました。 ハレの日(お祭りやお盆、お正月や冠婚葬祭など、あらたまった特別な場合のこと)の弁当箱や貯蔵用の容器として、あるいは贈答用・接客用の食器として漆塗りの重箱が発達しました。
この作品のような磁器製の段重は、技術的な困難さからか17世紀にはみられない器形でしたが、製陶技術の発達もあって18世紀末頃から次第に漆器の重箱を模したものが作られるようになります。
磁器製の段重は大体3段に重ねられ、白い地膚に松竹梅や鶴亀、瑞雲などの意匠に色絵付けが施されたものが多く、それらは主に持ち運びを必要としない正月料理を入れるうつわとして用いられました。
しかしその一方で、芝居見物や遊船など物見遊山が庶民の間でも盛んになった江戸時代には、段重と徳利が収納できるような木枠を付けたり、持ち運びに便利な金属製の提げ手を付けたいわゆる提げ重(さげじゅう)と呼ばれるものも作られました。
お弁当やお酒を持ち、春はお花見、夏は花火や螢狩り、秋はお月見に紅葉狩り、そして冬に雪が降ると雪見見物と洒落こむなど、江戸時代の人々は季節ごとに移り変わる景色を眺めながら、四季折々の行楽行事を楽しんだといいます。
この段重もハレの日や、またはそんな行楽行事の一場面で用いられていたものなのでしょうか?
行楽セットが詰め込まれた提げ重を持ち、大勢でぞろぞろと行楽地に出掛け、夏の夜空に大輪の花を咲かせる花火や、水辺を飛び交う螢を眺めながら、段重に盛られたごちそうをお酒と一緒に楽しむ……イベント毎に開催される饗宴の場は、さぞや賑やかで華やいでいたに違いありません。
今年の夏も、各地で沢山の花火大会が開催されています。缶ビールのおつまみにプラスティック製の容器に入った焼きそばを露店やコンビニで購入し、美味しいものをその場で気軽に食べながら、綺麗な花火を楽しむ現代人の私たち。
欲しいものがあれば何でも揃うという大変便利な飽食の時代なのですが……江戸時代の人々からみれば、もしかしたら現代人の花火大会の楽しみ方では、少々物足りなく感じてしまうかも知れませんね(筆者はこの楽しみ方、決して嫌ではないのですが……)。
さてさて江戸時代の人々は、この段重に一体どんな料理を盛りつけたのでしょう?
皆様ならどんな料理を盛りつけますか?
皆様のご来館をお待ちしております。