梅雨の季節となりました。湿度が高くじめじめする雨の日は室内で過ごす方も多いと思います。外は雨という時こそ、美術館でじっくり作品と向き合って過ごすのは如何でしょうか。現在当館では、「館蔵 古伊万里の展開—魅惑の作品類—」を今月26日(日)まで開催中です。涼し気な雰囲気の染付・白磁・青磁を中心に展示が行われ、鑑賞者に清涼感を運んでくれることと思います。今回は、「染付 網目文 皿 伊万里」江戸時代( 18世紀 口径 40.1㎝ )をご紹介します。
この皿は見込全体に網目文様で覆われており、文様は皿をひっくり返して裏まで続いています。網目文様とは、漁業用の網の目を文様とする、一本の線により規則的に描かれた幾何学文の一種です。斜めの格子を縦長に描き、その線に丸みをつけていくと網目文様になります。見込中心部分を密に、口縁部周辺にいくに従って網目が粗くなるなど、まるで実際直径40cmの円い大皿に網を被せたような印象を与える繊細な絵付からは当時の陶工たちの優れた技術力と高いデザイン性が感じられます。
網目文様は中国・明時代末期の古染付から影響を受け、17世紀初期に製作された初期伊万里の頃より盛んに用いられました。18世紀には一旦少なくなりますものの、19世紀に再び網目文を描いた大皿や盃洗などが多くなりました。
網目文様の皿や器の中には、裏をひっくり返すと縁のところに波模様や魚文様が施されたものもあります。裏側にそんな凝った細工があるなんて、当時の職人の「粋」が感じられますよね。。
この作品が製作された18世紀には、大勢の人々が集う饗宴の場において大皿を用いる機会が多かったようです。そこでは誰もが刺身などの料理(今でいうお造り)をつまめるように、直に畳の上に大皿が置かれていました。
この大皿に当時の人々は何を盛ったのか、自分だったらどのように皿を活用するか色鮮やかな鯛を盛り、魚と皿の色の対比を愉しもうか、大皿のみを心ゆくまで愛でるなどと想像を巡らせるのも作品鑑賞の楽しむ方法の一つです。大皿は第3展示室に展示されています。
皆様のご来館をお待ちしております。