明けましておめでとうございます。
戸栗美術館は、 2007 年もより魅力的で皆様に楽しんでいただけるような展示を目指してまいります。どうぞ宜しくお願いいたします。当館は本年をもちまして開館 20 周年を迎えます。この節目の年を記念致しまして、名品展を開催する予定もございます。各展示内容につきましては年間スケジュールをご覧ください。
さて、今年第1回目の展示は「古九谷〜謎を秘めた躍動美」と題しまして、1月 6 日(土)から 2 月 28 日(水)まで開催いたします。古九谷様式の名品を多数出展し、その謎をもった魅力に迫る充実した内容となっております。古九谷様式独特の大胆で見応えのあるデザインを心ゆくまでご堪能ください。
その中で今回ご紹介いたしますのは、『色絵 瓜文 鉢 伊万里(古九谷様式)』[江戸時代( 17 世紀中葉)高 9.6 ㎝ 口径 44.5 ㎝ 高台径 19.9 ㎝]です。この作品は、腰に段をつけ、さらに内縁を 鐔縁 ( つばぶち ) 状に折って端を高くし 縁銹 ( ふちさび ) を施した古九谷青手の大鉢です。周囲の流水文を緑彩で塗りつぶし、窓絵のように広く取られた見込みには、黄彩の花小文を背景にして、大振りの瓜文様が緑と 紺青 ( こんじょう ) で描き出されています。外面は唐草文様を黒で描き、高台内重角に「瑞」を崩したような銘が記されています。
青手 ( あおで ) とは、 五彩手 ( ごさいで ) ・ 祥瑞手 ( しょんずいで ) などと並ぶ古九谷様式の作風のひとつです。器種は大皿や大鉢が大部分を占め、中皿以下の小品はごく稀にしか見受けられません。絵付けは、中国絵画を多く画題とした五彩手とは異なり、主に日本固有の文様を主題としています。また、山水図や瓜図・葡萄図といった中国原図のものも、直の模写は行わずに和様化されています。ぼってりとした実をつける茄子や瓜類、大きな葉をつけた柏葉や葡萄、あるいは大輪の牡丹などといった大振りな画題が多く選ばれます。それらは青や緑色の釉彩を基調として、器面をはみ出すほど大胆かつ躍動的に描かれています。
そして青手の代表的な特徴といえば「地文つぶし」の技法と言えるでしょう。「地文つぶし」とは、器面を隙間なく細かい文様で埋め、素地の色をわずかも残さず彩色で塗り込む構成法のことです。この作品も、周囲をうずまき状の流水文様で囲み、背景に細かい粒状の文様を敷き詰め、大きな葉の葉脈一本一本を丁寧に線書きしています。器を一面に金箔を貼った金屏風に見立てて描いたのでしょうか、細かい地文の入った黄彩は、少し黒味がかることによって金色の輝きを放っています。このように様々な技法が凝縮された濃厚な画面は、力強く重厚感がありますが繁雑さはありません。それにはモチーフの構成と色の 2 点が作用していると考えられます。広く残された背景には細かい花小文を規則的に配し、主題である南瓜は三枚の葉と二つの実が向きをそろえ、折り重なるように交互に並べられています。モチーフの重なりは画面に奥行きを与えており、黄・緑・青のみのバランスよい配色と相まって、より深みのあるデザインになっています。また、上下に伸びる蔓は、みる者の視線を動かし、南瓜の葉と実の形を反復するかのように大きく波打つことで、全体に統一感を加えてもいます。このように込み入った画面においても、使用する色とモチーフを制限することによって、迫力がより明快に伝わってくるのではないでしょうか。
職員一同、みなさまの御来館をお待ちしております。