学芸の小部屋

2007年3月号

「染付 竹虎文 捻花形皿 伊万里」

江戸時代(17世紀中葉)

 まだまだ風は冷たいですが、どこからともなく春の気配が漂ってくるこの頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

    さて、おかげさまをもちまして、当館は本年 11 月に開館20周年を迎えます。現在は 3 月 31 日まで館内整備のため休館とさせていただいておりますが、 4 月 1 日(日)より開館 20 周年を記念して「戸栗美術館名品展−古伊万里・江戸時代の技と美−」を開催いたします。どうぞお楽しみに。

  ところで、みなさまは戸栗美術館のマスコット的存在でもある「虎」をご存じでしょうか。みなさまにご覧いただいております当館のウェブページの随所に顔をだし、後ろ脚を高く上げて跳ねるような姿をした虎です。開館以来、「戸栗美術館」というロゴの隣で跳ね続けているこの虎には、実はモデルとなる作品があるのです。今回の学芸の小部屋では、開館 20 周年記念展を目前に控え、 20 年間活躍しているこの虎のモデルとなった「染付 竹虎文 捻花形皿 伊万里」[江戸時代( 17 世紀中葉)高 2 . 9 ㎝ 口径 19 . 6 ㎝ 高台径 12 . 5 ㎝]をご紹介いたします。

  この作品は、 轆轤 ( ろくろ ) 引きの後、型に打ち込む 型打 ( かたうち ) 成形と呼ばれる技法で、花びらを捻って立ち上げたような 捻 ( ねん ) 花 ( か ) と呼ばれる形に縁を細工した中皿です。捻花といっても狭い間隔でS字型の刻みを入れているだけなので比較的穏やかな印象となっています。裏面には 2 箇所に笹文、高台内には「誉」を崩したような銘が記されています。 17 世紀中葉になって初期伊万里の生産が安定してきた頃に作られたこの作品は、素地が青みがかりピンホールやヤマキズと呼ばれる焼成時にできるキズも多く見られるものの、それらが素朴な民画風の虎文と対応して親しみやすさを感じさせます。脚やしっぽに描き込まれたさらさらとした毛並みや、人間の顔を思わせる表情などは愛らしくユーモラスです。中国画や狩野派の障壁画、また伊万里焼においても虎と一緒に描かれるモチーフとして多いのは竹ですが、ここで描かれているのは笹と筍。それらの伸びゆくたくましさと虎の躍動感から、生き生きとした活動力をイメージして作られた作品なのかもしれません。

  戸栗美術館も、この虎と一緒にこれからもますます成長し、みなさまに親しまれ、愛される美術館をめざして日々努力を重ねていきたいと思っております。 4 月 1 日(日)より開催の「戸栗美術館名品展Ⅰ−古伊万里・江戸時代の技と美−」を皮切りに、 1 年間にわたって開館 20 周年記念展を開催して参ります。戸栗美術館所蔵の陶磁器の名品が一堂に会す見応えのある展示となるでしょう。詳しくは年間スケジュールのページをご覧ください。また、この機会に、ミュージアムグッズも館蔵品をモチーフにしたお洒落で可愛い文房具等の新商品を多数入荷いたしますのであわせてご利用ください。


職員一同、みなさまのご来館を心よりお待ちしております。

 


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