年の暮れも近づき寒くなってまいりましたが、皆様いかがおすごしでしょうか。当館では12月24日(水)まで、「青磁と染付展—青・蒼・碧—」を開催しております。

青磁銹釉貼付 盃台(波佐見)
今回は、波佐見(はさみ)の青磁についてご紹介します。今展示では1点、波佐見青磁を出展しております。伊万里焼の中心地は佐賀県有田地域ですが、有田に隣接する長崎県の波佐見町(当時は大村藩)でも有田と同じように17世紀前期に磁器を焼くことに成功しました。波佐見は18世紀になると「くらわんか」といわれる、安価な大量生産の染付磁器を作るようになっていくのですが、17世紀前期から中葉には落ち着いた色合いの優れた青磁を生産していました。特に三股窯(みつのまたよう)の青磁は「三股青磁」と称される優品です。上の写真が波佐見で作られた青磁の盃台(はいだい)です。盃台とはその名の通り、酒や茶などを入れた盃を載せて人に勧めるための台のことです。この作品の台の縁には銹釉(さびゆう)が塗られ、梅と竹の細工物が貼付けてありますが、その竹の葉にも銹釉が施されて作品の印象を引き締めています。
波佐見と有田の青磁の陶片の断面を比べてみると、土台となっている素地が、有田のものがほとんど真っ白であるのに対して波佐見のものは少し灰色がかっています。染付の場合、素地が灰色だと精製不足・技術が未完成などといわれてしまいますが、青磁の場合は素地の色によって完成した時の釉色に深みが出ます。実際、最も評価の高い中国・宋時代の青磁の素地は白い磁器ではなく灰色の有色粘土でできており、その中でも黒胎(こくたい)といわれる濃い灰色のものが最良とされているのです。素地が白くないことは青磁の場合、欠点にはなりません。波佐見青磁の落ち着いた色合いは、素地が灰色であることが主な原因といえるでしょう。
また、下の写真の陶片にも盃台と同じような梅の枝が貼付けてあります。こうした細工物を貼付ける技法が、波佐見青磁の特徴です。

波佐見から出土の青磁陶片(断面)

波佐見から出土の青磁陶片(上面)
今展示では、2階の特別展示室で陶片を使い技法の解説をしておりますので、本展示とあわせてご覧ください。
現在の展示は12月24日(水)で終了し、25日から休館となります。新年は1月6日(火)から「吉祥文様展—祝いのうつわ—」を開催いたします。お正月にふさわしくおめでたいうつわを展示いたしますので、是非お越しください。職員一同、お待ちしております。