年間スケジュール



2018年度展示スケジュール


◇2018年4月4日(水)~6月21日(木)

金襴手~人々を虜にした伊万里焼~展

 江戸時代元禄年間には好景気を迎え、経済力を蓄えた町人を中心として元禄文化が発展します。贅を好む風潮の中で、色絵を施した豪奢なうつわを求める気運が高まりました。そうした需要に応えるように、ちょうどこの頃、伊万里焼に“古伊万里金襴手様式”が成立します。この色絵と金彩を施したうつわは、高級食器として富裕層の間で大変好まれ、以降、伊万里焼の色絵を代表するものとなります。また、同時期に海外輸出向けにも古伊万里金襴手様式の壺や皿が生産され、西欧の王侯貴族にも食器や室内装飾品として人気を博しました。
 続く明治時代になると、それまで道具であった様々な工芸品が鑑賞品として評価されるようになります。食器であった伊万里焼にも鑑賞を目的に愛好し蒐集する外国人や日本人があらわれましたが、真っ先にその対象とされたのが古伊万里金襴手様式でした。
 江戸時代の高級食器から、美術品へ。今展では、いつの時代も人々を虜にしてきた絢爛豪華な古伊万里金襴手を展観いたします。
<出展予定作品:色絵 荒磯文 鉢 伊万里 江戸時代(17世紀末~18世紀初) 口径24.7㎝>



◇2018年7月4日(水)~9月22日(土)

古伊万里植物図鑑展

 日本では古来より四季折々の植物を楽しむ風習があります。特に工芸品には、それらをあらわしたものが少なくありません。伊万里焼も例にもれず、形や文様が植物をモチーフとしたものが多くみられます。それらは歳寒三友(松竹梅)や富貴(牡丹)、不老長寿(菊)や子孫繁栄(瓢箪)など、中国から伝わった「吉祥の意」を内包しているものもありますが、中には中国由来の意味だけではなく、日本的なおめでたい意味を持つものも。
 伊万里焼の生産がはじまった江戸時代は次第に園芸が盛んになり、植物栽培の手引書が多数出版された時代でもあります。菊番付などにみられるように、植物に対する賞玩文化が広がりをみせ、伊万里焼のモチーフにも身近な植物が採用されていきます。江戸末期には日本初の植物図鑑が刊行され以降の植物図鑑の礎を築きました。
 今展では約80点の出展作品にあらわされた植物を江戸末期に刊行された『本草図譜』を参考に、図鑑形式にてご紹介いたします。古伊万里植物図鑑を一緒に紐解いてみましょう。
<出展予定作品:色絵 菊梅文 鉢 伊万里 江戸時代(17世紀末~18世紀前半) 口径37.6㎝>




◇2018年10月5日(金)~12月22日(土)

鍋島と古九谷―意匠の系譜―展

 古九谷様式の時代にあたる17世紀中期の佐賀・有田では、成形や絵付けなどの技術革新が進みました。そうして生み出されたのは、大胆な配色と構図の色絵や、より鮮やかな発色となった染付、土型を駆使した薄造りの変形小皿など、器形や装飾、意匠も斬新な伊万里焼。しかし、17世紀後半に入ると、有田では次第に海外輸出に主眼を置くようになり、むしろ、その気風を受け継いだのは、伊万里焼とは袂を分かつようにして始まった、伊万里・大川内山にて焼造される鍋島焼でした。
 佐賀鍋島藩による徳川将軍家への献上のために創出され、幕閣や大名などへの贈答品としても用いられたと言う鍋島焼は、有田から集められた優秀な職人たちによって製作され、満ち溢れる品格と卓越した技術によって、現代においても日本磁器の最高峰と名高いものです。ただし、鍋島焼に用いられている成形や絵付けの技術、そして意匠は17世紀中期の有田に始まったものも多く、当時の技術革新を無くして、鍋島焼は成立しなかったと言っても過言ではないでしょう。
 鍋島焼と17世紀中期の伊万里焼、約80点によって繰り広げられる、美の競演をご堪能ください。
<出展予定作品:色絵 三瓢文 皿  鍋島 江戸時代(17世紀末~18世紀初) 口径20.5㎝>




◇2019年1月8日(火)~3月24日(日)

初期伊万里~大陸への憧憬~展

 日本初の国産磁器として誕生した伊万里焼。佐賀鍋島藩士であった山本常朝(1659~1719)の談話を聞き書きした『葉隠』(1716年)によれば、有田皿山は佐賀鍋島藩祖・鍋島直茂(1538~1618)が朝鮮出兵(1592・1597年)より帰陣の際、「日本の寶(たから)」とするよう、朝鮮人陶工を数名連れ帰ったことにはじまるといいます。伊万里焼のはじまりには、朝鮮からの技術の流入があったのです。
 その一方で、文様は中国風の画題が主。技術の大元は朝鮮のものであっても、当時磁器大国であった中国の製品を意識していたようです。 このような、朝鮮の技術をもって製作し、中国風の絵付けを施した草創期の伊万里焼を「初期伊万里」と呼んでいます。伊万里焼が作られはじめてから30年ほどの間ですが、草創期らしい自由で大胆な筆遣いの作風が親しみやすく、この時期ならではのおおらかさが魅力です。
 今展では初期伊万里の中に垣間見える朝鮮からの影響、中国への憧れを中心に、初期伊万里の魅力をご紹介していきます。
<出展予定作品:染付 蝶文 壺  伊万里 江戸時代(17世紀前期) 高13.6㎝>