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柿右衛門・古伊万里金襴手展
会期:2015年10月6日(火)~12月23日(水・祝)



伊万里 染付 双兎文 皿
色絵 双鶴文 輪花皿
伊万里(柿右衛門様式)
江戸時代(17世紀後半)
口径22.5㎝

伊万里 白磁 面取壺
色絵 婦人像
伊万里(柿右衛門様式)
江戸時代(17世紀後半)
高39.2㎝

伊万里 染付 花蝶文 水指
色絵 花鳥文 皿
伊万里
江戸時代(18世紀前半)
口径54.5cm

伊万里 染付 唐草文 人物鈕茶入
色絵 五艘船文 鉢
伊万里
江戸時代(18世紀初)
口径25.5cm



展覧会概要


 江戸時代、佐賀・有田において初の国産磁器として生まれた伊万里焼。17世紀前期から約100年の間、時代の要求に応じて様々な様式を展開しました。特にその技術が頂点に達した17世紀後半から18世紀前半は、伊万里焼が国内のみならず西欧をはじめとした海外へ華々しく進出した時代です。
 世界の磁器市場を独占していた中国が明清王朝交代に伴う混乱の中で磁器の輸出量を減少させたことを契機とし、伊万里焼は中国磁器にとってかわるべく、西欧の人々の嗜好に合わせた製品を開発し販路を広げました。17世紀後半には、乳白色の濁手(にごしで)と呼ばれる素地に明るい赤を基調とした賦彩を施した薄作りの皿類のほか、着物姿の婦人像など、西欧の人々の東洋趣味をくすぐる製品が数多く製造されています(柿右衛門様式)。
 続く元禄年間(1688-1704)、海外輸出を再開した中国磁器と市場をめぐり競争へと陥りますが、伊万里焼は作風・様式を量産向けに転換することで対抗します。この頃の製品(古伊万里金襴手様式)は、左右対称の構図や文様の反復を基本とした量産向きの意匠でありながら、染付・色絵の上に更に金彩を施した絢爛豪華なもの。大型の壷や皿は西欧の王侯貴族の宮殿を飾る室内装飾品として用いられました。また、同時に経済の安定した国内において、豊かになった商人・町人たちの間でも高級品として受容されました。
 今展では、17世紀後半から18世紀前半にかけて製造された伊万里焼を約80点展示。国内のみならず遠く海を渡り西欧の人々を魅了した名品の数々をご紹介致します。

展示詳細


■柿右衛門様式


伊万里 色絵 梅竹粟鶉文 皿
色絵 梅竹粟鶉文 皿(部分)
伊万里(柿右衛門様式)
江戸時代(17世紀後半)
 伊万里焼は、既に1640年代より色絵磁器の製造が始まり、一部は東南アジアへも輸出されていました。やがて1670年代に輸出事業の本格化に合わせ、西欧向けの新たな様式が成立します。この頃に製造された色絵磁器は、有田の職人や窯場を牽引する存在であった酒井田柿右衛門の名をとり“柿右衛門様式”と称されます。
 柿右衛門様式は、最大の特徴である濁手(にごしで)と呼ばれる乳白色の素地に、明るい赤を基調とした色絵を施したものが最上級品とされ、型を用いた精緻で薄作りな皿や鉢類が数多く生産されました。それらは濁手素地の白の美しさを活かすため、余白を多くとった絵画性の高い意匠を採用しており、繊細な筆致にもこの時代の絵付師の技術の高さがうかがえます。

■古伊万里金襴手様式


伊万里 色絵 菊牡丹文 壺
色絵 菊牡丹文 壺
伊万里
江戸時代(17世紀末~18世紀前半)
 伊万里焼の海外輸出が最盛期を迎える中、1680年代には中国磁器の本格輸出が再開されます。市場をめぐり中国磁器と競うことで、伊万里焼は新たな様式へと展開していきます。
 “古伊万里金襴手様式”と呼ばれる17世紀末~18世紀初頭に成立した様式は、窓絵を用いた左右対称の構図や文様の反復を基本とした量産向きの意匠でありながら、染付・色絵の上から金彩をふんだんに加えた華やかなものでした。その作風は、中国嘉靖年間(1522-1566)に景徳鎮窯で製造され、金彩の輝きを染織品の金襴に見立て、日本で“金襴手”と呼ばれたやきものに想を得たと考えられています。西欧からの注文を受け、王侯貴族の宮殿を飾る室内装飾品として相応しい絢爛豪華な大壺や大皿が数多く生産され、海を渡りました。
 また、同様式では国内用の小振りな鉢や皿類もつくられています。元禄年間(1688-1704)にあたる日本国内は商人や町人が力をつけ、奢侈を好む華やかな町人文化が栄えた頃。それまで大名など限られた上層階級の人々が手にしていた伊万里焼が、裕福な町人たちの間でも享受されるようになりました。

■同時代の染付


伊万里 染付 花籠文 皿
染付 花籠文 皿
伊万里
江戸時代(17世紀後半)
 “柿右衛門様式”“古伊万里金襴手様式”は色絵磁器を指しますが、各時代には並行して高品質な染付磁器も数多く生産されています。染付による絵付けは伊万里焼の草創期の頃から用いられていますが、17世紀後半にはその技術が頂点に達し、細線や濃(だみ)による塗り埋め、濃淡を駆使した巧みな絵付けが施されるようになりました。背景には、伊万里焼の海外輸出を手掛けたオランダ東インド会社の存在があり、中国磁器に代わる高品質な製品を求められた結果、伊万里焼の技術向上へと繋がったと考えられています。
 そうして生み出された染付製品には、国内向けの高級食器として皿や向付などがあったほか、西欧の生活様式に合わせた食器類、中国・景徳鎮窯製品を写した芙蓉手と呼ばれる皿類、装飾品として大型の壷や瓶などの輸出品があり、オランダ東インド会社を通じた伊万里焼の海外輸出は18世紀前半まで続きました。





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  『柿右衛門・古伊万里金襴手展』プレスリリース
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