2019年度展示スケジュール

2019年4月6日（土）～6月20日（木）

佐賀・長崎のやきものめぐり

　現在の佐賀県および長崎県の一部は、江戸時代においてはやきもの大国として名高い肥前国でした。中世までは目立ったやきもの生産は行われてきませんでしたが、16世紀末、その状況が一変します。朝鮮半島から陶工が渡来し、まずは陶器の焼造を開始。それが唐津（佐賀）を中心とした唐津焼で、ほどなく北部九州一帯に製陶技術が伝播しました。とくに、江戸時代に武雄（佐賀）で焼造された陶器は古武雄と呼ばれます。
　また、唐津焼生産が行われていた佐賀鍋島藩領の有田（佐賀）では、17世紀初頭に日本初の国産磁器の焼成に成功します。出荷港名を取って伊万里焼と呼ばれたそれらの磁器は、白い磁肌に色とりどりの絵付けで国内外の人々を魅了。有田のみならず、隣の武雄や嬉野の志田などにまで窯が広がり、膨大な量が焼造されました。17世紀後半には、伊万里焼の技術を基盤として、佐賀鍋島藩が徳川将軍家への献上を目的に、鍋島焼を製作しはじめます。また、有田での磁器誕生から間もなく、大村藩領の波佐見（長崎）、やや遅れて平戸藩領の三川内（長崎）でも磁器焼造に成功。肥前国は一躍、現代まで繋がるやきもの大国としての途を歩みます。
　今展では館蔵品の中から佐賀の古伊万里を中心に、鍋島焼や古武雄、志田、長崎の波佐見と三川内、そして現代の有田焼を一堂に会します。個性豊かなやきもの鑑賞をお楽しみください。

＜出展予定作品：染付 竹虎文 皿 　志田　江戸時代（19世紀）　口径28.7㎝　戸栗美術館所蔵＞

2019年7月2日（火）～9月22日（日）

太田記念美術館 連携企画展 青のある暮らし
－江戸を染める伊万里焼－

　江戸時代には染織技術が向上し、とくに藍染めが庶民に広まります。人々は暮らしのなかで浅葱(あさぎ)、縹(はなだ)、濃(こい)藍(あい)など濃淡様々な「青」を纏いました。同じく江戸時代に大きく発展した佐賀・有田の窯業に目を向けると、17世紀初めに誕生した日本初の国産磁器である伊万里焼の主力となったのは、白い素地に掛けられた透明な釉薬に柔らかくにじむ青色の文様をあらわした染付(そめつけ)。藍染めにちなんで、その呼び名がついたという染付は、時代ごとに表現に工夫を凝らし、青の趣を変化させながら発展していきました。
　伊万里焼は、時代の流行を敏感にキャッチして新しいものを取り入れ続けたやきものです。なかでも、18世紀には需要層の拡大や食文化の発展などに伴い、染付の食器を中心に生産量が増加します。また、この頃から襖の引手や将棋駒など、金属や木材といった本来磁器以外の素材で作られる暮らしの道具を模した伊万里焼が登場。染付の伊万里焼は、江戸の生活を染める青色の一翼を担いました。
　今展は太田記念美術館との連携企画展。共通展覧会名を「青のある暮らし」として、江戸時代の人々の暮らしを「青」という切り口から、各館の所蔵品を通じてご紹介いたします。戸栗美術館では、江戸の暮らしのシンボルカラーであった「青色」の伊万里焼をご堪能ください。

＜出展予定作品：染付 網目文 手鉢　　伊万里　江戸時代（18世紀後半）　口径21.0×21.0㎝　戸栗美術館所蔵＞

2019年10月4日（金）～12月19日（木）

たのしうつくし古伊万里のかたちⅠ

2020年1月7日（火）～3月22日（日）

たのしうつくし古伊万里のかたちⅡ

　丸に四角、花、葉、瓢箪、鳥、兎、帽子、扇子、細長い首、大きく張った肩……。これらは全て古伊万里に見られるかたちです。
　17世紀初頭に日本初の国産磁器として佐賀・有田で誕生した伊万里焼。江戸時代のものはとくに古伊万里と呼ばれます。
　磁器の一大生産地として飛び抜けた生産体制を有していた有田では、需要に応えて多様な器種を焼造しました。例えば、茶の湯文化が完成した17世紀前期には水指や茶入、茶懐石の向付としても相応しい皿や猪口など。また、大名らの宴では大皿や組食器も活躍しました。17世紀後半から西欧向けの海外輸出が本格化すると、ティーポットやシュガーポット、ワインカップなど、新たな器種も焼造されるように。さらに、18世紀以降は需要者層が広がり、皿や鉢といった組食器が量産されるとともに、煙草盆や手焙りなど、それまで他の材質でつくられていた生活道具をあえて磁器で作った遊び心あふれる伊万里焼が日常を飾るようになりました。
　このような豊富な器種のかたちもさることながら、装飾としてのかたちも充実しています。轆轤成形のみならず、土型を活用したり、彫り文様を施したり、絵付けと組み合わせたりと、様々な技術を駆使して多様なかたちが生み出されました。
　今展では前期と後期に分けて、器種やデザイン、成形技法など、様々な角度から古伊万里のかたちの魅力に迫ります。

＜出展予定作品：色絵 葡萄鳥文 輪花皿 　伊万里（古九谷様式）　江戸時代（17世紀中期）　口径34.5㎝　戸栗美術館所蔵＞